デトックス
そぼ降る雨が、ほど良く酔いが回った身体の火照りを鎮めていく。
今夜は久しぶりに気のおけない友人と二人、お気に入りの串かつ田中で腹いっぱい揚げ物と酒を楽しんだ。
ラインでメッセージを交換しているうち、時間の調整がついたら飲みに行こうという話になり、トントン拍子に今日の宴の開催が決まった。
今年の上半期は色々なことがあり、心のなかにタールのような粘着質の澱が溜まっていた。
いつかどこかで家族以外の友人に吐き出したい、聞いてもらいたい、笑い飛ばしてもらいたいと思っていた。
串かつの盛り合わせとハイボール。
これほど心と胃袋を躍らせる組み合わせは数少ないと言える。(餃子とチャーハンとビールもあるが)
テーブルに並べられた串揚げとハイボール数杯を胃袋に流し込んだあたりで、上半期の色々を友人に語って聞かせた。
苦笑されるか呆れられるか、はたまた笑い飛ばされるか。
聞いてもらえるだけでありがたく、返されるリアクションに同情の類は一切求めていなかった。
うなづいてくれるだけで十分だったのに・・・・・。
友人はこう言ってくれた。
「それで良かったんじゃないの?いいんだよ、無理しなくて。家族のことが最優先なんだから、仕事のことなんて二の次にして当たり前じゃん」
うなずかれるワケでもなく、同情されるワケでもなかった。
ただただ自分のことを肯定してくれたのだ。
ちょっとキツめのハイボールの炭酸が喉の奥にひっかかるのと同時に、鼻の奥にツンとこみ上げるものがあった。
心が弱っているときにヘンな同情や憐憫はいらなかったのだ。
ただただ自分の選択した結果を肯定し、認めてもらいたかっただけなのだ。
店を出る頃にはすっかり雨が降り出し、Tシャツからむき出しになった腕に容赦なく降り掛かってきた。
ほろ酔いで火照った身体に心地よい雨だ。
けれど、もっと心地よかったのは、友人からの肯定の言葉だった。
ありがとう。
聴いてくれてありがとう。肯定してくれてありがとう。
雨音にかき消されないよう、今夜の別れ際の「ありがとう」は精一杯声を張った。
針のような銀色の雨は容赦なく体温を奪っていったけれど、それでも心の中は灯りが点ったように暖かかった。
つまらない日記に付き合ってくれて、本当にありがとうございます。