こんなにするの?
バーコードがスキャンされていく。
ピッという小気味よい音がレジスターから発せられると、小さな電光表示部分にはブルーの数字で値段が表示される。
2,400円・・・・・。
それを見た途端に絶句した。
「は?コタツ布団のクリーニング代が2,400円もするの?」、心のなかで悲鳴にも似た絶叫を上げる。
食卓に卵料理がめっきり登場しなくなったあたりから、物価高の波は容赦なく襲いかかってきているのだと薄々感づいてはいたのだが、ここにきての値上げラッシュには驚きを隠せずにいる。
世に流通する商品全てが値上げ、値上げ、値上げ!と、シュプレヒコールの雄叫びを上げている。
価格据え置きとおぼしきものも、よくよく中身を見れば内容量が明らかに目減りしており、実質的な値上げが敢行されているのは明白である。
消費財や食材などの値上げの他に、クリーニングなどのサービス対価も同様に値上げされているのは当たり前ではあるが、よもやこれほどとは思わなかった。
夕刻。
いつもの通りウォーキングに出かけようと身支度を整え、玄関先を出たところで雨が景気よく降り出した。
片手にスマホ、両耳にはイヤフォンを装着したものの、しばらくは玄関先での待機を余儀なくされたのだが、一向に止む気配を見せない雨模様にギブアップをし、部屋に戻ったところで妻に告げられる。
「ウォーキングいけないでしょ?だったら雨がこれ以上ひどくなるまえにクリーニング屋さんに連れて行って欲しいの。こないだ外したコタツ布団をクリーニングに出したいから」とのことだった。
取るものもとりあえずクリーニング屋に車を走らせ、結構な重さのコタツ布団をカウンターまで持っていき、愛想の悪いパートのオバちゃんがバーコードを読み取った途端、先の値段が電光掲示部分に表示されたのである。
私の記憶では、コタツ布団のクリーニング代などたかが知れており、せいぜい1,000円ちょっとの金額でマルっと丸洗いしてくれるものだと思っていた。
一体どうしたというのだろう、2,400円という金額が俄には信じがたく、酸欠金魚のようにレジの前で口をパクパクとさせていたところ・・・・・。
妻がおもむろに財布から小さな紙切れを出したかと思うと、パートのオバちゃんがそこに印刷されたバーコードを読み取った。
表示された金額が2,400円から1,200円に減額されていた。
「私が急いでたのはこの半額クーポンの有効期限が今日までだったからよ!」
私の顔を見て妻はそう呟き、口角を思いっきり左右に上げてニィ~っと笑ってみせたのだ。
どうりで雨が小降りになってきたのにクリーニング屋に急げ!と急かしたわけだ。
今日という日を逃し、明日になった途端に料金は倍に跳ね上がるのだ。
妻は妻なりに、爪に火をともすような思いで家計のことを案じてくれていたのだ。
割引券を得意げにヒラヒラと振る妻を見て、ちょっとだけ見直した梅雨空の夕刻だった。
つまらない日記に付き合ってくれて、本当にありがとうございます。