コロナ、いまさら?

私と妻の夫婦関係は良くも悪くもなく、可もなく不可もない。
どこからどうみてもごくごく普通の夫婦関係であり、結婚後10年以上を経過したそれは、どこの一般家庭でも見受けられるものと相違ないと信じている。

昭和スタイル全開。体罰・暴言・チェメチョメを信条とする体育教師が乗り込んだバスが突然タイムスリップし、たどり着いたその土地は令和現代の2024年。
昭和と令和。
隔てられた二つの時代の常識、価値観、デファクト・スタンダードやモラルの違い、周囲のリアクションにどうやっても翻弄される。しかし、それぞれの「あたりまえ」を徐々に受け入れつつ、それでもなお拭いきれない違和感に、「ソレって本当に正しいの?メンドクセ!」と、遠慮会釈なしに心のつぶやきを声に出してしまう主人公。

「不適切にもほどがある」と銘打ったドラマを夢中になって視聴している最中、妻がボソリと、しかし、ハッキリとした口調で夕食の載ったテーブルの上につぶやく。

「稼ぎが少ないのに喰らう飯はニ人前以上。デブで汚くてドブの臭いがする。こんな不適切極まりない男と一緒に人生をおくっているなんて・・・・・」
主人公を演じる某俳優は決してイケメンではない。目がギョロついて声が甲高く、どちらかといえばかなり個性的なご面相の持ち主である。
にもかかわらず、彼が演じる体育教師と私を見比べ、それでもやっぱりこの俳優の方が全然イケてると目で訴えるのだ。
モグモグと夕飯を咀嚼する音のみで、言葉に発することなく訴えるのだ。

妻よ、君の人生において私がそこまで不適切な存在というのなら、どうして結婚などという愚かな選択肢を君はチョイスしたのだ?
10年以上一緒にいると、こうまで糞味噌に言われても、その言葉を忍の一字で受け入れなくてはならないのか?
それが令和の夫婦のスタンダードなのか?
それが結婚の真実なのか?

我が家において、「ハラスメント撲滅」なる弱者救済コンプライアンスの光明は一向に見えてこない。
もちろん、医療従事者という立場でメンタルをケアしてくれる産業医の存在など望むべくもない。
コンプライアンスって一体なんなのだろう、有名無実な美辞麗句は存在しない。

おぉ、神よ・・・・・。


そんな、私を愛しているはずの妻の体調はかんばしくなかった。
ここ数日、咳が止まらないようだったが、目立った症状はそのくらいで、熱も平熱よりちょっと高い程度だったのである。

軽い風邪をひいたのだと思った妻は、一向に止まる気配を見せない咳だけはなんとかしようと、かかりつけのクリニックを受診した。

担当した看護師の見立ても妻と同様で、「この程度なら軽い風邪でしょう。でも、念のためにコロナの抗体検査しちゃいますね~」と、軽いノリで極細の検査キットを鼻の穴の奥に通してゴシゴシすると、そそくさと検査室に戻っていった。

待つこと5分。
ひきつった笑いの看護師がコロナの陽性反応が出たことを妻に告げた。
本人だけでなく、医師も妻もびっくりしていたようだ。
何しろ熱がそれほど出ていない(高いときで37度)、軽い倦怠感と咳だけであり、血中酸素濃度も95%を余裕で超えていたからだ。

診察を終え内服薬を処方してもらい妻は帰宅。
診断日から最低でも5日間の外出禁止、出勤禁止、自宅で安静すべしとの診断がくだされたのだ。

そこに至るまでの数日。
私は妻と寝食を共にするだけでなく、妻の実家のお墓参りに行くため、密室と化した車の中で、往復3時間はツバを飛ばし合いながらの口喧嘩をしていたのだからたまらない。

妻の診断結果を聞いてからというもの、途端に、加速度的に私の体調が急降下を始めた。
40度以上の高熱、激しく繰り返す咳と喉の痛み、仕事をするとき以上に感じる超絶な倦怠感。
これらの症状が出ているにもかかわらず、腹だけは普段通りに減るのである。
喉の痛みと咳のおかげで、食欲はあるものの口に固形物を運びいれることができない。
口に含んだ途端、ブラックアウトするのではないかと思うほどに咳き込み、テーブルの上に食べ物を噴射してしまう始末だったのである。

もう地獄であった。

問答無用で妻と同じクリニックで診察を受けたが、妻からのコロナウィルスという素敵なプレゼントをもらっていたのは、誰の目にも明らかだった。
高齢の母親を罹患させるわけにはいかないので、急遽、妹の家への緊急避難措置をとり、家の中には妻と私の二人っきり。
みるみるうちに体調が復活する妻を尻目に、私の方はといえば、最悪な体調がロシアとウクライナの戦争の如き膠着状態を続けていたのだ。

咳は地味に体力と気力を睡眠時間を強奪していく。
体力を取り戻すべく食事だけでも摂ろうとしても、結果は前述の通りである。
なんとか体調が戻り、職場復帰するまでにキッチリ5日かかってしまった。
まだまだ倦怠感や喉の痛み、キレの悪い痰に悩まされていたのだが、どうにかこうにか仕事を再開させたのである。

職場に復帰してから一週間以上経過するが、未だに倦怠感と喉の違和感は続いている。
コロナが猛威を振るっていた2020年~2023年の間、あれだけ細心の注意を払ってコロナ対策をしていたにもかかわらず、罹患するときはアッという間である。

再び妻に罹患させてはならぬと、私が療養しているときは問答無用で寝室は別にさせられ、食事も自分の部屋でボソボソと食べる羽目になってしまっていた。
移した本人はケロっとしたもので、リビングのTVを独占できたとばかりに、お気に入りの韓ドラを飽きるまで視聴し続けていた。

我が家にもたらされた一連の騒動を、コロナ・ハラスメントではないのか?と、妻に詰め寄ったところで無駄である。
ハラスメント、コンプライアンスなどの単語に無頓着どころか無関心なのである。
やりきれない思いを胸にしまい、今夜も心のなかでつぶやいてみる。

「君のその態度って正しいの?不適切にもほどがあるんじゃない?」

かのドラマは先日に大団円を迎え、最終回は高視聴率をマークしたとネットニュースは伝えていた。



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