2023年6月12日

後遺症

ロックバンド「黒夢」の楽曲ではないが、現在、ひどい後遺症に犯されている。
精神的にヤラれたのももちろんであるが、とにかく肉体的な後遺症が酷いのだ。

実は、今月に入り、ガテン系の仕事を一週間体験的にやってみた。
いわゆる一つの「軽貨物配送」ってヤツを30代の若者たちに混じってやってみたのだ。

必要な資格は普通自動車の運転免許証ただ一つだけ。
その他に必要なものといえば、気力と根性、そして何より体力が必要不可欠というシンプル極まりないものだ。
今までの経歴やキャリア、体得してきた技能などは一切不問の世界であり、運転ができて無尽蔵な体力さえあればこなせる仕事である。
(とは言いつつ、担当地域の詳細な配送ルートやデータ管理のためのハンディ端末の使い方、その他諸々の細かいルールなどがあり、やたらと記憶力の良さも要求される)

だが・・・・・。
この最大限に要求される体力がアラフィフのおっさんには決定的に欠けていた。
平成元年にサラリーマンとしての産声を上げてから30年強。
ひたすらに机にかじりつき、オフコンや汎用機、パソコンのシステム構築に血道を上げていた事務職野郎にとって、この軽貨物配送は無理ゲーだった。
いや、罰ゲームだっと言っても言い過ぎではない。

私が担当した地域は山の麓にある観光地。
麓といってもそこそこのアップダウンがある地域であり、その中で設定されたコースをクルクルと何周も周りながら荷物を指定の場所に落としていく。
まるで回し車を延々と転がすハムスターのようだ。

時間帯により渋滞する道路を綿密に研究し、最も効率的なコース取りをしながら荷物を配送する。
だが、刻々と変化する道路の混雑状況は、完璧と思えるコースをいとも簡単に複雑怪奇な迷宮ラビリンスに変化させてしまう。
ただでさえ覚えることが多すぎるのに、その上で道路の混雑状況を瞬時に判断し、臨機応変な対応をするなど、ド素人の新人に求める方がおかしい。この時点で無理ゲー確定だ。
プログラミング初心者に、複雑な判定処理が必要なコードを何千行も書いてみろ!と言っているようなものだ。

ストップ&ゴーを繰り返し、その度に小走りに個人宅へ向かい荷物を下ろす。
中にはクソ重たい24本入のミネラルウォーターを2ケースもオーダーし、時間指定をしているにも関わらず平気で不在をカマす客などは珍しくもなんとも無い。
そういう客に限って、エレベーターのない4階建てのマンションなんかに住んでいたりする。
30キロ以上もあるダンボールを手持ちで運び、やっとの思いでたどり着いたのに不在をカマされたときの絶望感といったらない。
一日のうちに何度もこの事態に遭遇すれば、事務職野郎のヤワでナイーヴで豆腐のようなメンタルなど一発で木っ端微塵になる。

坂道や、段数の多い階段も地味にボディブローのように腰を痛めつける。
配送終了間際の時間帯になると(19~21時)、酷使しすぎた足腰の感覚はなくなり、まともに歩くことも難しくなってしまう。

なので・・・・・辞めた。

身体と精神は一週間で限界だった。そこそこ稼げるので頑張って続けたい願望はあったが、やはり心が折れギブ・アップした。
これだけのハード・ワークを週休1日のペースでこなすのは自殺行為に近い。辞めるに辞めれなくなり、ドップリと深みにハマったら年内にも身体と心を壊してしまいそうだったからだ。
モチベーションの炎は音もなく、夜の闇に吸い込まれるように消えていったのだ。

あれから4日以上の時間を経たが、未だに猛烈な筋肉痛に苛まれている。
毎晩のように医者から処方された湿布を腰に貼っているが、一向に痛みは治まらない。

間に合わなかったらどうしよう?
早配そうはい(指定時間より前に配送すること)、遅配ちはい(指定時間より遅く配送すること)、未配みはい(その日のうちに配送できないこと)という、配送業界での三大タブーを犯さぬよう業務を遂行するには、果てしない知力と体力を要求される。

配送業界で生き残っている猛者はつくづく凄いと思う。
週休一日で早朝から夜遅くまで働き、自分の時間を切り売りしながらもパワフルに人生を謳歌している。

なにごとにおいてもチャレンジするのは尊いことだと思っているが、チャレンジできる時期は確実に存在する。
軽貨物配送はアラフィフには厳しすぎる。スペランカーの如き無理ゲー要素満載だ。
猛烈な腰の痛みを抱えつつ、ゆっくり眠ることのできる生活を選択した自分を正しいと思う。

ま、言い訳なのであるが。
自分の体力を見誤ったことを猛省しつつ、ソッと腰を撫でている雨降りの夜であった。


つまらない日記に付き合ってくれて、本当にありがとうございます。



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