2024年11月12日

「お客様は3,000円キャッシュバックの対象となっております。キャッシュバックのお振込をさせていただくのに、◯◯というサービスにご加入いただいて・・・・・」

また始まった。
いきなり、仕事時間中だというのにお構いなしに電話をかけてきて、一方的にまくしたてる。
マニュアル通りに一言一句間違えず、淀みなく説明文を読み上げる鼻声のキツイ担当者の声が異常に耳障りである。
不明な相手からの電話にうっかり出てしまった自分を呪う。

しかし、この手のキャッシュバック特典の電話が頻繁にかかってくるのは何故だろう。
年がら年中キャンペーンを張って、通信キャリア会社はどのくらいの費用を年間計上しているのか想像できない。
ある一定の条件はあるのだろうが、一口3,000円からのキャッシュバックを大多数に大盤振る舞いするのだから、相当な金額を広告宣伝費に使っているに違いない。

3,000円を振り込んでくれるのは嬉しい。非常に嬉しい。
3,000円といったらかなりリッチなランチを妻と二人で楽しむことができる金額である。(ディナーじゃ到底足りないのが昨今のインフレ状況の悲しさである)
お金をくれるとわざわざ向こうから申し入れて来てくれている。それを断る貧乏人などこの世に存在しないと思う。
だが、私はこの手のお誘いに毎回お断りを入れている、正真正銘、頭のおかしな貧乏人だ。
なんとでも言ってほしい。

この世に美味しい話、ラクして儲かる話など転がっているワケはないし、転がっていたとしても、ソレは拾って喰ったら最後、確実に腹痛を起こす毒饅頭にほかならない。
胃の中に落とし込み(キャッシュバックの受け入れ手続きを行い)、腹の中で栄養分を吸収しようとした途端に毒素が全身にまわり、あえなくトイレの中でのたうち回る結果となる。

企業側もタダでキャッシュバックなどを実施するワケはなく、その代わりに期間限定で何かしらのサービスに加入させるというのがほとんどではないだろうか(それも、毎月結構な料金のサービスである)
2ヶ月程度の期間サービスに加入し、気に入らなければ解約してくれればその間の費用はかからず、なおかつキャッシュバック特典の恩恵も受けられるという謳い文句だが、コレが絶妙に狡猾で曲者だ。
加入するときは流れる水の如きスムーズな手続きが、解約するときは専用のウェブサイトにアクセスし、アレコレと情報を入力するステップを踏まされる。
しかも2ヶ月程度という期間がまた巧妙なのだ。
解約手続きをしないと自動的に契約が継続されるというタチの悪いものであるため、ついうっかりすると手続きを忘れ、延々と使いもしないサービス料を垂れ流すように支払う罠に陥る。
試してやるから解約もそっちで期間満了になったらやってくれよ!と思うのは私だけだろうか?

高齢者が目先のお金にホイホイつられて契約し、気がついたら毎月の料金がドえらい事になっていた。
など、結構ありがちな話だと思うのだ。
高齢者が解約するのに専用のページにアクセスなど出来るワケがないし、するワケがない。
ラインのメッセージに返信するのもおぼつかないのに、こんなの完全に死にゲーではないか。

それと、加入手続きをするのに最低でも2~3回、複数の別会社から確認の電話がかかってくるという謎システムには辟易する。
通信キャリアを名乗っているのだから当然如く顧客情報は一元管理されているはずだし、いくら複数の関連会社を経由しての手続き業といえど、それは共有されて然るべきものではないのだろうか。
何度も何度も氏名や住所、生年月日を聞かれては、3,000円をゲットできるパッションからの熱量が氷点下のごとく冷え込んでゆく。

この情報確認リレーって必要?と、相手先の担当者に問い質しても無駄である。
顧客情報が共有されていたとしても、「確認した」という既成事実が必要であり、言質をとるために仕事をしている彼らにとって、それを放棄せよと説いているのと同じである。
面倒なステップを踏ませ、何度も確認させたことをユーザに認識させるのが彼らの仕事といっても過言ではないだろう。

一度キャッシュバックに目がくらみ、家計へのハニートラップに引っかかりそうになったが、余りにしつこく何度もかかってくる確認電話に堪忍袋の緒が切れた。
「何度同じことを言わせりゃ気が済むんですか?さっきの会社の人から情報共有は出来てないんですか?もぅ結構です!」
と、半ばキレ気味に会話を終了させてしまってからというもの、それからは一切この手の話にはフルシカトを決め込むことにしている。

「だからアンタは小遣いが少ないのよ」
ブチ切れて電話を切った私に妻が冷たく言い放つ。
定額のお小遣いを増やすためには多少の手続きの煩雑さをも我慢し、特典をゲットせよとのことなのだろう。

でもね、妻よ。
そうやってキャッシュバックが振り込まれても、絶対に使わせてくれないじゃないの。
と、台所で夕食の準備に勤しんでいる妻の逞しい背中に無言の圧力をかけたところで、私の小遣いはやっぱり増えないのであろうとため息をつくばかりであった。

 



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