猛省ゆえの一口ケーキ

品川エキュートでのルーティーン

通勤途中の品川駅。
駅構内にあるエキュートでクリスマス・ケーキを買うようになったのは何年前からだろう?
母や妻の誕生日、その他諸々のイベント事があると、エキュートでケーキを買って帰宅するのがここ数年のルーティーンになっている。
私のお小遣いから支払うのも、なぜか知らないがルーティーンになっている。
レシートを妻に渡し代金を請求するも、そのままゴミ箱に直行するのもルーティーンなっている。
自動的に私のお小遣いがどんどん目減りするも、どれだけ公的資金注入による財政援助を求めても、それも当然のごとくスルーされるのも、もちろんルーティーン。

五郎丸のルーティーンを真似た指を、そのまま妻の尻に突き立ててやろうと思っても、それを果たしたら最後、来月の小遣い減額が強制執行されるのが怖くて実行できないのも、これもまた我がルーティーン。

泣ける・・・・・。

バタークリームという名の破壊神

日本でクリスマス・ケーキを夕食後のデザートとして食するようになったのはいつからだろう?
思えば、私が小学生の頃には既にその習慣があったと記憶している。
ただ、私は子供の頃ケーキが嫌いだった。
私が子供の頃に供されたケーキは、全面にゴッツリとバタークリームが塗られていたからだ。

これがイケない。
味は確かに美味しいのだが、バタークリームは余りにもパンチ力が強すぎた。
フライドチキンやローストビーフ、色鮮やかなサラダ、熱々のスープ。
まるで、ヤマザキのTVコマーシャルの画面がVRでそのまま飛び出してきたかのような、豪勢な料理の数々が所せましとテーブルに並び、華やかに食卓を彩るのだ。

幸せな食卓とはこれここに!

万年腹ペコ小僧、ナチュラル・ボーン・肥満児であったがゆえ、目にも留まらぬ勢いで、それらご馳走を飲み物のごとく飲み込んだ後では、どうやってもバタークリームのケーキはやっつけられない難敵だったのである。
ジャイアントロボのビッグパンチをも凌ぐ破壊力に、いかに万年肥満児の拡張ストマックをもってしても、リバース寸前のところでテンカウントを待つのが精一杯だったのだ。

それ以来、クリスマス・ディナーのデザートはもっぱらアイスクリームの時期が何年か続いたのである。
(寒い時にコタツに入って食べるアイスクリームってバカ美味じゃないですか?)
我が家の食卓にケーキが再び登場するのは、革命的新発明である「生クリーム」の登場を待つことになる。

パティスリーQBGの「ハニージュエルショコラ」

どう考えても、このクリスマスシーズンに置きにきていた「マツコの知らない世界」のケーキ特集。

何気なく番組を視聴していたのだが、品川エキュートにも支店を構える「パティスリーQBG」さんのケーキが取り上げられていた。
紹介されていたケーキは「ルージュ・ノエル」。
目にも鮮やかなイチゴのピューレをふんだんに使用した、イチゴ高騰への救世主的な解を提示した、進化系イチゴクリスマスケーキという大々的なフィーチャーのされ方だった。

ピンク一色の表面は一瞬、バタークリームのそれを彷彿とさせる色合いだったが、それを凌駕するような、美味しそうな断面の画像が映し出された途端に購入を決意!
番組終了もそこそこに品川エキュートのサイトに直行したのだが、はやりTVメディアの影響力は凄まじく、当該商品はとっくに売り切れていた。
一歩遅かったのである。

サイトのクリスマスケーキをじっくり吟味し、タッチの差で売り切れることがないよう、迅速かつ慎重に次なるターゲットを決定した。

今年は「ハニージュエルショコラ」。

写真をご覧いただきたい。まるで漆黒なるチョコレートの宇宙にゴールドの惑星が並んでいるような、ファンタジー溢れる壮大なロマンを感じさせるデザイン。
濃厚そうなチョコの色合いは、永遠なるユニバースを彷彿とさせる。
生クリームのケーキも大好きだが、ここ数年はチョコレートケーキに目がない肥満おやじ。
予約を無事に完了させ、ようやく一息つくことができたのだ。

漆黒の宇宙空間にゴールドに彩られた惑星が並ぶ!
まさに濃厚なチョコのユニバース。
はちみつ・メープル専門メーカー直営洋菓子店~パティスリーQBG
東京築地、品川にあるパティスリーQBG公式サイトです。はちみつ・メープルシロップメーカークインビーガーデンの直営洋菓子店です。エキナカでオーダーケーキ承ります。

戦後の闇市か、ここは?

12月24日。
年末の慌ただしさとクリスマスが重なり、巨大ターミナル駅である品川はいつもより人の往来が激しい。
ザッと見渡してみても、普段の倍近くの人間が18時の品川駅を埋め尽くしている。

行き交う人の流れに逆らいながら、山手線ホームから駅構内へと階段を上がり、品川エキュートに到着するやいなや、私は絶句した。

ここは戦後の闇市なのか?

リアルタイムで戦後の闇市など体験しているわけではないのだが、戦後すぐのフォトアーカイブに映し出された闇市のごとく、クリスマスの品川エキュートは人で溢れかえっていた。
砂糖に群がる蟻の如く。
永ちゃんでなくとも、「ワーイなぜに?」と軽いめまいを覚えるはずだ。

事前に予約しておいて本当に良かった。
お店には通常のレジカウンターの他に、即席であつらえた事前予約専用のレジカウンターがあった。
通常のカウンターには長蛇の列。帰宅ラッシュには少々早い18時の段階で、30人以上がとぐろを巻くように並んでいる。
かたや予約専用カウンターには5人ほどしか並んでいない。
普通に待って購入していたら、お目当てのケーキを購入するどころか、良さげな商品は売り切れてしまうだろう。
笑顔を囲むはずのディナーが、たった一個のケーキを買えないばかりに、悲しみのアンジーになってしまうこと必至であった。

断言する。
クリスマスケーキは事前に予約するべし。
準備を怠れば、それなりの店でそれなりの商品しか購入できないだろう。
普段は何事においても適当で、準備らしい準備をしない私なのだが、こと食べ物になると話は別だ。
美味いものを食べるには、それなりにリサーチと準備が必要なのだ。

艱難辛苦を乗り越え、やっとの思いでケーキを片手に帰宅。
楽しい夕食を終え(低糖質ダイエット中ゆえに、肉と野菜がメインだったが)、いよいよケーキタイム!と相成ったのだが、ここで妻が一言。

「五郎はダイエット中でしょ?だから一口ね」
と、スプーンでひとすくいした量の、チマっとしたケーキをコーヒーと共に出されたのだ。
ほとんど丸々残った漆黒のチョコ・ユニバースは、妻と母上の胃袋という名のブラックホールに落ちていった。

これがダイエッターの悲しいルーティーンなのか?
一口のケーキをかみしめ、ゴクリと飲み込んで、私の令和初のクリスマスは終わりを告げた。

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