アウトバックステーキハウスでの狂宴

休日前の狂宴

2019年11月22日(金)。

皮膚科から処方されている塗り薬が切れてしまったため、また、半年ぶりに肌の状態を診察してもらう必要もあり、この日は有給休暇を取って休むつもりでいた。

みなさんもお分かりだと思うが、とにかく病院は混む。
ネットで診察予約をあらかじめ入れておいたとしても、そんなことまるで無かったことのように、狂ったように混み合うのだ。
「何のための予約ですか?」と、待合室でスマホを片手に叫びたくなるのはいつものことだ。
自分の順番が回ってくるまでに待たされすぎて、その後に立てていた予定がすっかり狂ってしまうことが何回もあった。今では病院で診察してもらうのは一日がかりの用事になってしまっている。

私が通っている「Aクリニック」。クリニックと銘打ってはいるが完全に「小児科」だ。
間違いない。
建物全体が丸みを帯びたかわいらしいデザインとなっており、同様に、待合室もパステルカラーを基調とした、角の取れたデザインのソファやテーブルが備え付けてあり、子供が走り回ったり転んだりしてもケガをしないように配慮されている。
ベビーベット、本棚にはアンパンマンの絵本、そしてテーブルの上には積み木まであるのだ。
これで小児科でなくて一体なんだというのか?

それまで別のクリニックで処方してもらっていた薬がどうにも肌に合わず、どこか別の皮膚科を探していたとき、たまたまネットで、近所にある評判の良い「Aクリニック」を見つけたのだ。
診察内容にアレルギー診断とあったので、まさか小児科であることなど、受診当日まで全く疑っていなかった。
あまりに腑に落ちなかったので、先日ネットで病院案内を確認したところ、しっかりと「小児科」と明記されていた。
探している最中は、「お子様から大人の方まで診察いたします。」と言う一文しか目に入っていなかったのだ。

「ここは絶対小児科だよね?」という、確信にも似た大勘違いをしたまま、実に二年近く受診をしては薬を処方してもらっていたのだ。
もう完全にアホである。

子供が泣き叫ぶ阿鼻叫喚の地獄絵図の中、ぽつんと、アラフィフのおっさんが、乳幼児を連れた若いお母さん達と共に待合室で順番を待っている。
完全に浮いている、浮きまくっている。アウェー感がハンパない。
普通にしててもくたびれて薄汚いおっさんなのに、休みの日は輪をかけて、さらにその薄汚さにターボがかかっている。不潔ブースト圧は1.0を軽く超え、エンジンブロー寸前の勢いだ。

ヒゲは剃らない、頭は寝グセでハネまくり、着ている服はヨレヨレ。自宅のリビング以外には決して出てきてはいけない、ましてや外出するなんて許されるはずもないホームレス・コーデなのだ。
世のうら若き女性から最も嫌悪される、そんな読者モデルみたいな出で立ちで診察に臨んでいるのである。
そんな中、小綺麗な若いお母さんとその子供と共に一つの部屋にいるという、公開処刑にも似たシチュエーション。
心無い若者がいたらソッコーで写真を撮られ、TwitterやSNSで全世界に拡散されていることだろう。
「小児科の待合室で汚いおやじ発見!ウケる!」とか書かれて、写真がバラまかれるのだ。

というか、二年近くも小児科だったことに気付かない私が既にバカッターなのだが・・・・・。

早く帰りたいと思いつつ、じっと診察や会計を待つ時間は地獄だ・・・・・。
せめて小児科ではないクリニックに変えたいと思うのだが、これがなかなか見つからない。
下手に薬を変えて症状が悪化してしまったことが度々あったのだ。

「だったらもっと小綺麗な格好して受診したらいいじゃないか!」とお叱りを受けそうだが、そんなごもっともな意見を吹き飛ばしてしまうほど、休みの日のダルさは強力だ。
出来ることなら気が済むまで惰眠を貪りたいのだ。
ウィークデー五日の溜まりに溜まった疲れを、二度寝、三度寝でしっかりと取っておきたいのだ。
ただでさえ物事の判断基準を、「面倒」か「面倒くさくない」かの二択で決める男である。
病院に行くのに小綺麗な格好をする、という思考に結びつかない。
見た目より支度がラクな方を選んでいるのだ。初冬の外気温より冷たい、若いお母さん達からの視線に耐えるより他ならないのである。

クリニックでの話が長くなってしまった。
休みの前日である21日(木)。
定時後、私は元部下であるマリオ(仮名:40歳独身男性)と共に、品川インターシティにある「アウトバックステーキハウス」で、肉祭りと題した狂宴を繰り広げようと計画していた。

糖質制限ダイエット中であるが、肉は食べても良い!と盲信しての開催決定である。
聖帝サウザーのごとく、「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」の精神で、赤身の肉と対峙することとなった。

以下、長くなったので続きます。


タイトルとURLをコピーしました