2024年8月8日

負けた・・・・・。
こらえきれずに禁断の文明の利器の力を借りてしまった。

思い返せばコロナ禍真っ最中の4年前。
不要不急の外出やソーシャル・ディスタンスが一般市民の生活に影響を及ぼし始めた頃から、電気代はじめとする諸々の生活費の節約と倹約生活をスタートさせたのだった。
当然真夏の酷暑の中、室内気温が30度を優に超える日々であってもノー・エアコン生活を我が身に強いてきた。
「冷風は身体に毒!」との妻からのスローガンに従い、ステイホームやリモートワークの日々においてもノー・エアコン生活を貫いてきたのだ。

だが・・・・・。
その倹約生活の厳命を破る事態となったのは今年の7月に入ってからだった。

もはやアラ還のジジィに連日の酷暑は厳しすぎたのだ。
どれだけ扇風機の羽根を回そうと、冷感シートで何度も身体を拭き上げようと、アイスノンで首元から冷やそうとも、何をどうやっても寝付けない日々が続いたのだ。
万策尽きるとはまさにこの事だった。

睡眠不足は翌日の生産性やパフォーマンスを著しく低下させ、おまけに肉体疲労は蓄積される一方だ。
熱帯夜は連日のように睡眠時間を強奪してゆく代わりに、私の目の下にクッキリとした隈を残していったのだ。
これにはさすがの貧乏人型決戦兵器である私をもってしても、到底太刀打ちできるものではなかった。

そうして、約3年以上もの間コンセントから外していたエアコンのプラグを挿入し、真新しい乾電池に交換したリモコンのスイッチを押してしまったのである。パンドラの箱を開けたようなものだった。
「命の危険がある暑さ」とニュースの天気予報では連呼していたが、これはウソではなかったのだ。
このまま寝不足と不快指数マックスの夜を肉体に刻み込んでいったら、確実に寿命が縮むのは自明の理であった。

さらば、倹約と節約に彩られた忌むべき強制極貧生活よ。
ゲーム感覚で挑めば倹約・節約生活も楽しいと嘯いていた痩せ我慢の日々よ。
もぅいいのだ。ラクになろう。
爪に火をともすようにして日々の生活費を切り詰めても、身体を壊したら病院代のほうがよほど高く付く。
こんな簡単な真理に今まで目をつぶり、小銭を貯める努力をしていた自分が愚かしい。

吹出口から届けられる冷風は熱帯夜を根こそぎ払い除けた。
眉をひそめ、全身に汗をかきベッドに横たわっていたのがウソのようだ。
自然にまぶたが閉じられ、何の抵抗もなく意識が睡眠の底に下りてゆく。
これが文明の利器を使った睡眠なのだ。これほどまでに快適な入眠を3年以上もの間放棄していたとは恐ろしい。

7月中旬からの毎日はウソのようにぐっすり眠れた。
元来仕事に対する生産性は著しく低く、示せるだけのパフォーマンスなど持ち合わせていなかったが、それでも日々の仕事は確実にスムーズにこなせるようになっていた。
睡眠をおろそかにするやつ、つまり自分は愚か者だったのだ。

何が一番悲しかったかといえば、エアコン生活を始めてからの電気代が、前年同月のものと比較してもそれほど高くなっていなかったことだ。
わずか数千円を節約(ケチる)するために、これほど快適な夜を手放していたからである。
くらしTEPCOのウェブサイトで表示された電気代は悲しい現実を眼前に突きつけていた。

それでも関心してしまったのは妻である。
もちろんエアコンをつけてからは今まで以上に快適な睡眠をとっているのだが、それ以前も今と変わらぬ生活ぶりだったのだ。
ハイグレードな貧乏人型決戦兵器は妻であったのだと気がついた。
節約生活の号令を発布した本人は、それに見合うストレス耐性の身体をもった超人だったのである。

 


 


タイトルとURLをコピーしました