疲れと安堵を乗せて電車は走る
目の前を通り過ぎる車窓の風景をぼんやりと眺めながら、吊り革にかなりの体重を預けていることに気がつく。
弾けるような笑顔で繁華街の駅を下車する若いグループもいれば、降りる駅を乗り過ごすのではないか心配になるほど、大きな口を開けて寝込んでしまっている中年のビジネスマンがシートに座っている。
金曜日の夕方、西日に包まれた山手線は一週間分の疲れと週末に入れる安堵感を乗せて走っている。
自分も含めた乗客の全てが、残り少ない体力でやっとの思いで帰路についている。
今週も頑張ったのだ。
一週間仕事をすると、日々の睡眠不足からくる疲れが金曜日にはピークに達している。
デスクワークで必要最小限の動きしかしない、目、肩、背中、腰は凝りに凝り固まってしまった。
歩くたびに、悲鳴に似たギシギシという音が身体のあちこちから 聞こえてくるようだ。
あなたの疲れを癒やす場所は?
最寄り駅から疲れた体を引きずり、ようやく帰宅する。
部屋の明かりを点けた後、カバン、メガネ、時計、財布、スマホ、それぞれを定位置に置く。
手早くスーツを脱ぎハンバーに掛け、部屋着に着替えてリビングの椅子に座ったところで、ようやく週末の自由な時間が始まるのだ。
これほど開放的な気分になれるのは他にない。
温かい食事が乗り、家族の笑顔を囲むダイニングテーブル。
ゆっくりTVを見ながら過ごすリビングルーム。
太陽の光をたくさん吸収し、ふっくらと柔くなった布団に包まれるベッド。
音楽を聞きながら、香り高いコーヒーを楽しむ自分の部屋。
ひとそれぞれ心と身体を癒やすための場所が必ずある。
開放感にひたりながら、この癒やしの場所でのひとときを過ごすために一週間頑張ってきたようなものである。
何といってもバスルーム
私が日々の、そして一週間分の疲れを癒やす場所といえばバスルームである。
熱めのお湯をタップリと入れ、湧き上がる湯気の中、肩までしっかり湯船に浸かる。
緊張していた頭と身体、心までもが一気にお湯の暖かさで解きほぐれていく。
しっかりと食事を摂り、空腹が満たされたあとのバスタイムが一番好きなのである。
何も考えず、ただひたすらに暖かさに身を委ね身体を弛緩させてゆく。
疲れや心のこわばりがお湯の中に溶け出していき、代わりに生気が注入されていくようだ。
闇風呂のススメ
大好きなこのバスタイムだが、最近気になることが出てきた。
明るすぎるのである。
バスルームに蛍光灯を設置している家はほとんど無いだろう。
リラックスするための場所には、暖色系の (白熱球のような)浴室照明を選択しているはずなのだ。
だが、この浴室照明が明るすぎる。
明るすぎる照明ゆえに視神経と副交換神経が刺激され、どうにも落ち着かない。
リラックスするためのバスタイムなのに、パチっと目が冴え、緊張を強いられているような気がしてきたのだ。
そこで、脱衣所の明かりだけを点けバスルームの明かりを消してみた。
脱衣所のLED証明がバスルームの磨りガラスを通り、なんともいえない具合の明るさなのだ。
本当の闇になってしまうと足元もおぼつかないし、第一、身体や頭を洗うこともままならない。
薄明かりくらいがちょうど良いのだ。
薄暗い明かりの中が何ともいえずリラックスできるのである。
もう少しムーディーに
薄暗いだけでも十分にリラックスできるのだが、もう少しムーディーなバスタイムを楽しみたいと、あるアイテムを導入してみた。
ヨガスタジオ(実際に利用したことはないのだが)に置いてある、ろうそくの代わりにLEDライトを使用した照明器具だ。
炎のゆらめき具合が再現されており、眺めているだけでも時間を忘れられる。
また、火を使用しないので安心だし、防水になっているので湯船に浮かべて楽しむこともできる。
ほんのりと明るいバスタイム。
金曜日の夜、一番の癒やしがここにあるのである。