アウトバックステーキハウスでの狂宴(その2)

定時間際に飛び込む残業申請

2019年11月21日(木)17:32

我社の就業時間は9:00~17:30となっており、「働き方改革」の美名のもと、管理職に対しても定時退社を励行するよう指導されはじめている。
実際にそれを守っている管理職などほとんど居ないのはお分かりだろう。あくまでも表面上の取り決めだ。
定時を過ぎても皆、何事もなかったかのように黙々と仕事を続けている。

だが一般職となるとそうは行かない。残業するとなれば、定時間内に申請を部長まで通す必要があるのだ。
部長までに申請を通す途中、課長がその必要性と正当性を認め、なおかつ、「なるほど、わかりました。それなら残業してもいいですよ。」と下命をしてようやく許可される、なんとも七面倒臭いシステムに成り下がったのだ。

今日はなんとしても早く帰宅せねばならない!
痛みに耐えかねて仕方なく予約した夜間診療の歯医者、普段から雑な扱いをしていて激オコMAX状態が続いている時の妻の誕生日、何よりも優先させている地元友人たちとの飲み会など、こういう日に限って、そういう七面倒臭い申請関係の通知がメールで飛んでくる。しかも定時間際に。

「どうしてもっと早く申請してこねぇんだよ、カス!!」。

散乱した机をキレイに片付け、手帳や携帯電話、その他諸々の小物を全てカバンに詰め込み、片腕をコートに通し、後はPCをシャット・ダウンする段になって、いきなりその手の通知メールが飛んでくるのだ。
社会人になり、これほど神経を逆撫でするお手軽アイテムにお目にかかったことがない。なにしろ、送信ボタンを一発押すだけで、帰宅スクランブル状態の中間管理職をその場に氷漬けにすることができるのである。

定時で帰宅しなければならない日の17時15分を過ぎたあたりは、神にも祈る気持ちでメールの受信ボックを睨みつける。
「どうか、あと3分でいいからメールが飛んできませんように!そしたら後は知らねぇ明日だ、明日!」。
この熱い思いが天に届いたら、アット言う間にシャット・ダウンのボタンを押し、脱兎のごとく会社を後にすることができる。

肉祭り当日。この日は何事もなく定時を知らせるチャイムを聞くことに成功した。
目にも留まらぬ速さでPCをシャットダウンさせ、「お先っす!」と、同僚への適当な挨拶もそこそこに席を立ち上がる。もう勝ったも同然である。
PCを個人ロッカーにしまい込み、ドアを開けエレベーターホールに向かい、アルカトラズのごとき会社のビルから無事に脱出し、見事山手線最寄り駅に到着したのだ。
気分はすっかりクリント・イーストウッドである。

その男「マリオ」

2019年11月21日(木)18:20

はやる肉への熱い思いを抑えつつ、マリオとの待ち合わせ場所である、品川駅中央改札口にあるトライアングルクロックへ急いだ。

大型のターミナル駅である品川は、木曜日の夕方でもかなりの混雑ぶりを見せる。
これが金曜日の夕方ともなると、目の前のあらゆる方向から人が行き来し、ただ真っ直ぐに歩くという、シンプルな肉体的動作も一気に困難を極めるようになる。
アムロ並のニュータイプでもない限り、このアステロイドベルトのような人混みを避けながら、スムーズに歩いて目的地まで到着することはかなりの難易度を要求される。
はぁ、仕事での疲れがここに来てさらに倍増する・・・・・。

山手線を降り、行き交う人々のカバンやら体にぶつかりながら、時には舌打ちされながら、ようやく待ち合わせ場所に到着し待つこと10分。
18時20分、ようやく「マリオ」がトライアングルクロック現れた。

ここで、本ブログ初の登場人物となった「マリオ」について説明せねばなるまい。
マリオ(仮名)は40歳独身男性、私の元部下である。
以前は私と同じ部署に所属していたのだが、現在は部署移動で別の事業部で働いている。
もうすっかり私とは違う内容の仕事をしているのだ。

以前、安井金比羅宮様にお参りした時の記事をアップした。
その中で、願いを聞き届けてもらった友人としてさりげなく紹介している。
そう、友人と記載はしているが、かなり強引な形で配置転換という願いを聞き入れてもらった彼こそが、今回再び登場する「マリオ」本人なのである。

見事願いを聞き入れてもらったマリオだったが、その後は苦労の連続だったようだ。
全く畑違いの部署から、いきなり中堅どころの社員が何の説明もなく異動してきたのである。
そりゃ誰だっていぶかしく思うだろう。何かヤラかして異動されられたんじゃないかと、最初から色眼鏡で見てくる輩も少なからずいたはずである。

この肉祭りにしてもマリオから誘われたものだった。
きっと、相当なフラストレーションが溜まっているに違いなかった。
澱のように溜まった相当量のフラストレーションや愚痴の数々を、私と一緒に肉を喰らいながら、心ゆくまで吐き出したかったに違いない。

良いだろうマリオ、かかってきなさい。
すっかりくたびれたとはいえ、私は元お前の上司であり、今では戦友と思っている。
「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」の精神で、今日はとことん肉を楽しもう。
そして吐き出すのだ、何もかも!

品川駅からインターシティ内にあるアウトバックステーキハウスまでの道のり、私達二人は大声で、今話題の「全裸監督」について語り合いながら歩いていた。
伝説のAV監督「村西とおる」氏の活躍を、「山田孝之」氏の名演技で再現した超話題作だ。
この作品がヒットしたおかげで、配信会社のNetflixの株価が上がったと噂で聞いた。(定かではない)
ご想像の通り、村西作品には若い頃さんざっぱらお世話になった。
脇毛を剃毛すること無く、惜しげもなくTV画面にさらけだした「黒木香」嬢。
彼女の登場はセンセーショナルであり事件だった。
AV黎明期にあり、今では当たり前になった性技の数々をスタンダードの位置まで押し上げたのは、まぎれもなく村西氏と黒木嬢だったことに異論を挟む者はいないだろう。

ティータイムならぬティッシュタイムのお供に、必ず氏の作品がベッドサイドにあったことは言うまでもない。

中年オヤジが二人、イルミネーションが点灯し始めた初冬のインターシティを歩くのだ。
「ナイスですねぇ~」とか言いながら、ゲタゲタと下品な笑い声を上げながらである。
今冷静になって思い返してみても、「最低」という二文字以外、この二人を的確に表現している単語が見当たらない。

周りは初々しいカップルや家路を急ぐビジネスマン、OL達でいっぱいだ。
その中での「全裸監督」談義だ。
この様子が音声入りで防犯カメラに録画でもされていて、万が一何かの拍子で家族に見られでもしたら・・・・・。

一家離散にも繋がりかねないかなりきわどい下ネタを、イルミネーション輝くペイブメントで壮大に繰り広げていたのである。
もし仮に妻が見てしまったとしても、絶対に「ナイスですねぇ~!」とは言わないだろう。

無言で緑色の紙にサインさせられ、明日から独身アラフィフの身の上になること必至である。

またまた長くなってしまったので、続きます。
(いい加減に肉の話をしろって?)


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