やっぱり太っちゃったじゃん!

やっぱり米が好き

キンキンに冷やしたグラスに、なみなみと注ぎ入れたレモンサワーの上で、氷が踊る。

顔面を真っ黄色に塗りたくり、レモンのかぶり物をした、美しき女形を売りにしている大衆演劇の役者が出演する、あの、おなじみのお酒である。(女形姿との激しすぎるギャップに、軽くめまいを覚えるほどだ)
一番最初にそのTVCMを見た時は、「おいおいおい、俳句で永世名人取った役者なのに、少しは仕事選べよ!」と、半ば呆れながらも、何でも食いつく仕事の選び方に、コロナ禍における、大衆演劇の座長たる彼の窮状を感じ取ってしまったのである。「私が金稼がなきゃなんないのよ、劇団員食わせなきゃならないから!」と、TVで臆面もなく発言していたからだ。やはり、エンタメ業界が通常を取り戻すには、まだまだ時間がかかるようだ。札止めとなった舞台の上で華麗に舞う彼の姿を、心待ちにしているファンは大勢いるに違いない。

晩酌にレモンサワーをグビグビあおり、テーブルに並べられた料理をたいらげ、食後にガリガリ君リッチ・チョコミントまで食べ終わったところで、妻がポツリとつぶやく。
「なんだかさぁ、低糖質ダイエットとか言ってお米は食べてないけど、レモンサワーをグビグビ飲んで、食後にアイスなんて食べてたら意味ないんじゃないの?」、と。

低糖質ダイエットと銘打ち、今年に入ってから「お米」の摂取量を、かなりの勢いでセーブしている。さすがに全く口にしないという訳にはいかないので、一日に一食だけはお米を食べるようにしているのだ。リモートワーク中、手っ取り早く口に運ぶことができ、後片付けも簡単な「おにぎり」をウィークデーのランチタイムでは常食としている。

しかし、塩気の強いおかずが夕飯の食卓に並ぶとき、「あぁ・・・・・これで真っ白いご飯の盛られた茶碗があれば、我が空腹を満たす食の芸術が完成するのに・・・・・」と、思わず口をついてしまう。アタック25の最終問題、ほぼ全てのパネルが空いているというのに、肝心な部分が隠れてしまっているため、あと一歩のところで海外旅行を逃してしまうような、そんな虚脱感を感じるのだ。それだけ、ご飯という存在が食卓には欠かせないものとなっているのは、日本人である読者の方々なら充分ご理解いただけると信じている。

どうして、ご飯はあんなに糖質が高いのだろうか?
「ご飯が食べれないなら、お肉や魚を食べればいいじゃない」。断頭台の露と消えた、マリー・アントワネットが放った一世一代のボケにも似たセリフを妻が言う。
肉や魚はもちろん好きだ、特に肉については溺愛していると言ってもいい。だが、その肉も、ご飯という主役があったればこその肉なのだ。肉だけをドドン!と盛られた一皿と、ふりかけの小袋と味噌汁、そして茶碗に盛られたご飯のセット、そのどちらかを選べと問われれば、私は迷わず後者を選んでしまうのだ。
迷わず食えよ、食えばわかるさ。
それだけ、私は白米が好きなのである。

ウォーキングとバーピーやってりゃ大丈夫

リモートワークに勤しむ傍ら、日々のウォーキングとバーピートレーニングを欠かしてはいない。梅雨のこの時期、雨足が強く、どうしても外出を断念せざるを得ない場合を除いては、ほぼ毎日、1時間弱のウォーキングとバーピートレーニング(1セット/4回×2)を実行しているのだ。

ウォーキングはただ早足で歩いているだけなので、それほど運動負荷は高くない。だが、バーピートレーニングとなると話は別だ。先のブログの記事でも書いたが、20秒のワークアウトと10秒の休憩、これを2セット繰り返すだけの、シンプル極まりない短時間の運動なのだが、鬼のように辛い。高負荷の運動を織り交ぜながら、心肺機能を酷使する。終わったと同時に床に仰向けになり、絶え絶えの息を整えるのに2~3分はかかってしまう。その間にも全身から汗が噴き出し、着ているTシャツはグッショリと濡れ、色が変わる。しばらくは身動きが取れず、白い天井と虚空を見上げながら呆けてしまうのだ。

このバーピートレーニング、痩せるための運動ではない。
体幹を鍛え、基礎代謝を上げるための筋トレなのだ。相変わらず皮下脂肪はタップリ付いているのだが、筋肉量は格段に増えてきていると実感できる。分厚い脂肪のスグ下に、今までは何の反応も見せなかった我が腹筋が、しっかりとした硬い手応えを持って、押し付けた指を跳ね返すようになったのだ。
筋肉量が増え基礎代謝が上がることにより、しっかりと脂肪を燃焼する体が、少しずつではあるが出来上がってきている実感がある。

「ウォーキングとバーピートレーニングやってりゃ大丈夫!デザートのアイスは確かに余計だけど、少しずつ筋肉ついてっから」

先の妻からの、「低糖質ダイエットやっても意味ないじゃん」発言に抗議するように答える。痩せてはいないだろうが、今まで落としたマイナス4kgの体重はキープ出来ていると、根拠のない確信めいたものを感じていたのだ。(ここ最近はトレーニングをしているという自信から、体重計に乗っていない)
多少の糖質を摂取しようとも、脂肪が筋肉に変化しているという謎の持論により、それは無かったことにしてしまっていた。

「絶対ウソ!そんなことありえない。あんなチマっとした運動をちょっとだけやってて痩せてるはずがない。筋肉はついてても痩せるなんて絶対ない!」

夫の涙ぐましい努力を一切肯定することなく、一刀両断に切って捨てたのだ。糖質制限のおかずを一生懸命調理しているのに、ガリガリ君リッチを美味そうに食する夫の姿を見て、いくら応援しても、成績が全く上がらない受験生を持つ母親の心境に達したのやもしれぬ。そう、ブチ切れたのだ。
糖質制限のおかず、調理するのに食材や分量が事細かに指定されており、とにかくこの上なく面倒らしいのだ。(私は料理を一切やらないので、その苦労が全く分からない)それだけ苦労して作っているのに、食後にアイスなんぞ食べていては、成果など期待できないのは誰に目にも明らかだからだ。

「乗ってみろ、体重計に! は? 今スグだ、今スグ!!」

ガチギレされた妻に逆らえば、Yoshikiのツーバスキックと吉川晃司のシンバル・キックのコンボでボコボコにされる。仕方なく妻の目の前で生まれたままの姿で仁王立ちになる。

「アンタ、どうして体重計乗るのにいちいち全裸になるの?パンツ一枚履いて体重変わるの?おかしいんじゃない?」

体重を測る前に全裸になるのは私のルーティーンだ。それは譲れない。ゆえに、体重を計るのは、入浴後の全裸マン・タイムの時であり、測定を強要された今、妻の目の前で全裸になるのに何が間違っているというのか?

・・・・・。
増えていた・・・・・。一生懸命努力して、マイナス4kgまで落とした体重が、ものの見事にリバウンド。リバウンドでプラスマイナス・ゼロの帳消し状態ならまだしも、2kgも増加してしまっていたのである。無慈悲に、そして非情にその数値を指し示す体重計を前に、半ば呆れながら立ち尽くす妻と私がいた。

「もぅ糖質制限のおかず、作らなくていいよね?意味ないよね?そうだよね?太ってるよね?肥えてるよね?これは全部コロナのせいですか?あんたのセイですよね?アイスのせいですよね?」

質問の形式をとる詰問に、だんだんと頭が下がる。あぁ、情けない。
なんとか拝み倒して、糖質制限のおかずだけは継続して作ってもらえることとなった。もちろん、ガリガリ君リッチは金輪際、口にすることは叶わなくなった。

今日、以前から頼んでいた、ふるさと納税の返礼品が到着した。
奇しくも、到着したのは山形県産の「はえぬき」であった。今宵、ほかほか、炊きたての「はえぬき」を口に出来るのは妻だけであるのは言うまでもない。
何もこんな時に・・・・・と、タイミングが悪すぎる返礼品の到着を恨みながら、今夜も糖質制限のおかずのみの晩餐になるのだ。

もちろん、レモンサワーも禁止である。

ダイエットはいつでも初舞台・・・・・。レモン色の富美男が笑っている。


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