「逃げろ 生きろ 生きのびろ!」を読んで

生きるって、なに?

地球の広報・旅人・エッセイストとして活躍されている「たかのてるこ」さん。

18年務めた東映を退社・独立し、現在までに、7大陸・68か国を持ち前の明るさとバイタリティーで駆け抜けた、筋金入りのトラベラーである。
長澤まさみさんが主演した大ヒットTVドラマ、「ガンジス川でバタフライ」の著書として知られている。

そんな彼女の最新作、「逃げろ 生きろ 生きのびろ!」が届けられた。

とても印象深いかわいらしい少女のカバー写真が目を引く。
そしてページをめくるといきなり、「生きるって、なに?」という唐突な問いかけから始まるのだ。

この問いかけは、彼女の前作の著書のタイトルにもなっている言葉であり、その中で彼女は、「生きることは、ありのままの自分を受け入れ、他人との繋がりに感謝し、今を楽しむこと!」と説いている。
何よりも大切なのは、まずは自分をしっかりと肯定し、受け入れ愛することなのだと。

さまざまな「生きること」の問いと答えがリレー形式で進んでいく。
全てのページには、世界各国を旅してまわったときに撮影された、あふれるばかりの笑顔と壮大な風景の写真で埋め尽くされている。
彼女が紡ぎだす言葉のパワーと人々の笑顔に、今まで考えることを躊躇していた「自分を受け入れ愛すること」を、ぼんやりとではあるが真正面から取り組んでみようという気になってくる。

今までは、自分を受け入れる事など思ってもみなかったからだ。
「いろいろ頑張ってるつもりだけど、自分はなぁ~・・・・・」と、つい思ってしまうのだ。

逃げろ 生きろ 生きのびろ!

現代社会で生きていくのに、自分を受け入れ愛することはとても難しい。

置かれた状況や立場で望まれている成果を出せない場合、否応なしに否定されるからだ。
学校、社会、家庭、人間関係全てにおいてだ。

否定され、マイナスイメージのレッテルを貼られジッと我慢する生活を強いられた場合、どうやって自分に自信を持てばいいのか?
激しく罵倒されたり、逆に無視されるような扱いに対しどう抗うべきなのか?
答えが出ない堂々巡りの中、心はどんどん疲弊して凝り固まっていく。
自分なんていらないんだ、死んだほうがマシだ!と、どうしたって思ってしまう。

だが彼女はこうも説く。
「こんなこと私にできるわけがない」。
「こんなことができない私はダメなんだ」とか、
自分自身に制限(呪い)をかけることは「自分イジメ」なのだ。
それに気づき、毎日自分が生きたい「今」を作らなければならない。

その「今」を作るために辛くてどうしようもないなら「逃げてもいい」。
日々、「生きる」活動を絶やしてはいけない。
そのために「逃げる」。
「生きるため、生き延びるために逃げる」のだ。

何度も何度も目にしたことのある、手垢のついたフレーズが並ぶ。
目新しいことは何も言ってはいない。
それでも、彼女からのメッセージは重みが違う。
すんなりやれそうな気になってくるのだ。

それはきっと、彼女も私と同じように悩み、苦しみ、もがき抜いたからなのだ。
それを経験しているから、同じ言葉でも響き方が違うのあろう。

頑張ってみよう精一杯。
それでもダメならキッパリ諦めて、自分が輝ける場所を探すんだ。
きっと見つかる。

何の根拠も保証もないが、「たかのてるこ」という稀有なキャラクターが放つ言葉が、そんなちょっとした勇気をくれるような気がしたのである。

良書である、サクサク読める。
最後はほっこりと、温かいやさしい気持ちになれると思う。

是非読んでいただきたい。

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