頭を撫でてオキシトシン

趣味にしているウォーキングを楽しんでいる。

毎週土曜日の午後、大好きなFMヨコハマのラジオ番組を聞き終えた後、ゆっくりと昼食をとってから腹ごなしにウォーキングに出かけるだ。
最初はおっくうだったのだが、今ではすっかり週課となっている。

秋が深まるこの季節、太陽の日差しは優しく、近所にある大きな橋をわたる時、川上から吹いてくる風はとても爽やかである。
普段歩くより少しペースを上げる。額が汗ばむくらいがとても心地よい。

ウィークデーは座ったままのデスクワークゆえ、週末のこの時間を逃してしまうと、一週間ろくに体を動かすことなく終わってしまうのだ。
運動不足を人間ドックで指摘されているアラフィフには、無理矢理にでもこういう時間を作る必要があるのだ。

いつものウォーキングの途中、色鮮やかなウェアに身を包んだ若い女性とワンちゃんに出会う。

不思議とタイミングが合い、ほとんど毎回、その女性とワンちゃんに遭遇する。
その都度ワンちゃんは私の足元にまとわり付いて、しばらく遊んでいくのだ。

リードにつながれているのも忘れ、私の足の周りをクルクルと回り、楽しそうにジャレてくる。
本当にかわいい。
トイプードル特有の、あのモコモコとした、小さいぬいぐるみのような体格。
こっちに向かって笑いかけてるんじゃないか?と思わせるような、豊かな表情とつぶらな茶色い瞳。
若い女性がこぞってトイプードルを愛玩犬として大切にするのも理解できる。
自分の子供のようにかわいいのだろう。

「今日も天気が良くて、ワンちゃんも嬉しいですね」と、女性に声をかけた。

ウォーキングの足を止め、しゃがんでワンちゃんと同じ目線になる。
つぶらな瞳に見つめられ、思わず頭を撫でた。

「すみません、ウチの子、人懐っこくて甘えん坊で」と女性が答える。

大人しく頭を撫でられているワンちゃんを見ながら、程度の差こそあれ、本当に犬は人懐っこい動物だと改めて思う。

なにかの本で読んだのだが、動物は撫でられていると、オキシトシンというホルモンが分泌されるらしい。
このオキシトシン、社会性や親和性を高めるホルモンらしいのだ。
オキシトシンを利用した薬で、コミュニケーション能力が高まった研究成果も報告されている。

親が子供の頭を撫でるのは、意識することなく、実はこのホルモンによって、親和性が高まることを本能的に知っているからなのではないだろうか?

散歩の途中で出会うこの小太りなおやじと、このワンちゃんはコミュニケーションが取りたかったのかも知れない。
黙って大人しく撫でられていたのは、オキシトシンの作用により、言葉を交わすことなく、心を通わせることができると分かっていたのかも知れない。

そういえば、私だって人間、れっきとした動物である。
ワンちゃんの頭を撫でながら、実は私の脳内でもオキシトシンが分泌され、ワンちゃんと同じ気持ちになっていたのかも知れない。

距離を縮めるのにスキンシップはとても有効で効果的な手段だと思う。
ワンちゃんの頭を撫でていることで、実は私の方が癒やされていたのかもしれない。

ウォーキングが楽しくなってきたのは、実はこのせいだったのだろうか?
 

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