使い方を間違えた多目的トイレ

掟破りの活動自粛申請

「あんなに綺麗で可愛い奥さんがいるのになぁ、なにが不満だったんだろう?」
「今後、仕事のほとんどが無くなるだろうねぇ。でも、年収一億円も稼いでたんだ?!」
「ちょっとっていうか、かなりショック。好感度が高かったぶん余計にガッカリ」
「やっぱりねぇ・・・・・」

複数女性との不倫が大々的に文春砲で暴露される直前、当事者本人が関係各所に活動自粛を願い出るという、電光石火、前代未聞のアクロバティックな大技で話題をかっさらったのは、他でもない、年収一億円は下らないと噂される「グルメ王」様だ。
一般ピーポーの軽蔑と呆れが入り混じった非難が、SNSで矢のように連日飛び交っている。
ちょっと前までは、「不倫は文化だ!」の迷言を世に言い放ったかつてのトレンディー俳優が、コロナからの快気祝いでブイブイ言わせたところを激写され、同じくSNSで集中砲火を浴びていた。世は無常である。その集中砲火の矛先は、あっという間にグルメ王に向けられることとなったのだ。

爽やかな笑顔と、軽妙で誰も傷つかない程度の毒を持ったトーク、どのような形でイジられようとも瞬時にそれに反応し、的確で確実に笑いを取るツッコミができる才については、中堅芸人の中でも出色のものだったと思っている。
強面コンビとのカロリーゼロ理論におけるやりとり、超人気芸人との番組内で繰り広げられるポン酢戦争(ただの趣味趣向に関する言い争い)、土曜昼の情報番組でのそつのないスマートなMCぶり。
秋田美人の奥様とCMに出演すれば、奥様の知名度との相乗効果で、彼自身の出演料も2倍以上に跳ね上がったとも聞いている。

順風満帆。
人気も知名度も有る。そこそこイケてるルックスと、持ちネタであるグルメ情報を武器にオンラインサロンを主宰すれば、5,000円という高額な月会費を要求すれども、たちどころに千人単位の規模で人が集まったというではないか。
15歳も年下の奥様は、秋田県が生んだ見目麗しい美女である。天を仰ぎ見ながら世の不公平を嘆く男性がどれほどいたであろうか。
もし万が一、新垣結衣嬢が結婚などしようものなら、私もきっと天を仰ぎながら、その夫となる男性を羨みながら枕を涙で濡らすことになるであろう。

芸能界でその地位を盤石なものにし、ここから更なる飛躍を目論んでいたところでの不倫騒動だ。彼が目に見えて成功していればしているだけ、彼を羨望の眼差しで、またやっかみや妬みの視線で見つめていた一般人は、「やっちまったなぁ~!」と、クールポコのような雄叫びを心の中で上げたに違いない。
一般人が一生かかっても手にできぬような成功と富を手に入れた男のスキャンダルである。否が応でも注目度が高くなるのは致し方ないことなのだ。

多目的トイレはねぇだろう

複数女性との不倫。
不倫というスキャンダルで憂き目にあった有名芸能人は後をたたない。むしろ増えている傾向にあると思うのは私だけであろうか。一時の快楽に身を任せただけなのか、たはまた本気で相手を好きになり、人生における二人の出会うべき時期のずれを嘆き、ボタンの掛け違いと分かった上で逢瀬を重ねてしまったのだろうか。
いづれにしても、これだけ不倫というキーワードが世の中で敏感になっている時期での発覚である。普通に不倫をしていただけでも(普通の不倫ってなんだ?)、もう一発アウトな状況であるのは間違いなかろう。

グルメ王様の場合、更に悪かった。
事をいたす場所が、なんと多目的トイレの中だったというではないか。
多目的トイレは言わずもがな、身体に障害がある方や、病気や手術により排泄に時間がかかったりする方が優先的に利用するための公共施設だ。
通勤途中、急降下する腹具合にどうにも対処することができず、緊急事態のスクランブル発進で多目的トイレのお世話になったことは何度かある。張り裂けんばかりの肛門に持ちうる限りの全ての力と緊張を込め、必死の形相で迷走に迷走を重ねた上で見つけることのできた多目的トイレ。空きを示すブルーのインジケーターに彩られたドアを見たとき、弾薬飛び交う最前線の戦場で、たった一つの野戦病院を見つけたようであったのだ。生き延びたと涙を流す思いだったのである。
言い過ぎではない。多目的トイレは不要不急で絶対に使用してはならないのである。
健常者が利用して良いのは、リアルガチで本気の腹具合急降下の場合のみに限られるのだ。

ましてや、その密室の中で肉欲をむさぼる行為に及ぶなど、もっての外であり論外なのである。グルメ王様の性癖(?)は、それだけで火に油を注ぐかのような所業であったのだ。これにマスコミが飛びつかないワケがなかろう。不倫という忌むべき行為に多目的トイレという、普通に考えたらどうやったって結びつかない場所が突如としてキーワードとして飛び込んできたのである。
軽蔑、嫌悪の感情の他に、ケチで女性をただの性欲のはけ口にとしてしか扱わないゲス、変態無双のオマケまでついてしまったのである。
これはもう完全に芸能界からは抹殺されてしまったのと同意ではないか。

現在のTV局は視聴者、主には女性層からのクレームに非常に敏感になっていると聞く。
スキャンダル一つだけでもクレームが雨あられの如く殺到するのに、今回は余計なオプションが付きすぎてしまったのである。目も当てられないだろう。

私は以前からグルメ王様のことは好きでも嫌いでもなかった。どちらかというと少し嫌いだったのかもしれない。
その嫌悪感は何だったのかと思いかえせば、やはり、ドヤ顔で高圧的、しかも上から目線で物申すグルメ論が鼻持ちならなかったのだ。
厳選された素材を使い、卓越した技術で渾身の一皿を提供していだく。
これが美味しくないはずがなかろう。「美味しい!」の一言でいいのだ。
愛してやまないグルメタレントとしては、石塚英彦氏、寺門ジモン氏、そして大御所の彦麻呂氏のスリー・トップだ。
彼らの素晴らしいところは、美味しい料理をそのまま美味しいと伝えているに他ならない。素材の原産地や調理法、はたまた調味料のレア度などはレポートしない。
ただ口に含んで感じられる味、それこそを独自のボキャブラリーで必死に伝えてくれているのである。
グルメ王様の場合、そのウンチクもさることながら、料理の食べ方やら、焼き肉であれば肉の焼き方についても、「これが正当!これが王道!これが正しい!」と言わんばかりに、持論を視聴者や共演者に押し付けていた。
これがイヤでイヤで仕方なかったのだ。
お分かりいただけるだろうか?

このスキャンダルのおかげで、彼が出演している番組のいくつかは降板が発表されていた。CM契約も打ち切られ、それぞれに違約金などの支払も要求されるだろう。これは彼自身が招いたことによる責任なのだから、可哀想ともなんとも思わない。
ただ、必死に家庭で子育てに奮闘していた奥様のことを考えると心が痛い。
グルメ王の帰りを自宅で待ちわびる中、彼はトイレという密室で己の欲望を満たす行為にふけっていたのだ。
こうなると、某俳優たちのア○ホテルや車中のほうがまだナンボがマシだったと思う。
不倫報道には慣れたつもりではあったが、さすがにトイレオプションがついたとあっては、明確な嫌悪感を抱かざるを得なかった。

このまま彼がどうなるのかについては、はっきり言って興味がない。
芸能界に復帰するもよし、このままフェードアウトしてしまうのも運命だろう。
ただ、奥様とはしっかりと向き合ってほしいのだ。しっかりと謝罪だけはしてほしい。
逃げることはもはや許されないだろう。

場所が場所だけに、奥様がすべてを許し水に流してくれるのか、はたまた人生全てのウンを使い果たし下水に流されてしまうのか・・・・・。

これ以上、この件で不幸な人が現れないのを祈るばかりである。


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