フリーアドレスとは住所不定ということ

意味と意義を感じられない組織変更

どうしてこうもちょくちょく組織変更があるのか?
憤りとも怒りともつかない、半ば諦めに似たため息を漏らしながら新しい組織体制図を眺めたのは、下期が始まる直前の9月末のことだ。

我が事業部では、大規模なものは年初、小規模のものは半期のタイミングで組織変更が行われる。

「担当案件の業種と顧客の変遷に併せた、適切な人財フォーメーションを図るため」という、もっともらしい理由によるものなのだが、これが甚だ理解し難い。
半年の短いスパンで、担当している案件の業種や業態、顧客が変わることなどほとんどない。
逆に、半年で手離れ良くシステム開発が終了するのならば、次から次へと仕事が途切れることなく舞い込み、事業収入は飛躍的に安定し、予算達成状況に一喜一憂することなど皆無となる。
先日支給された賞与金額についても、「は?」ではなく、「おぉ!」となっていたはずである。

組織変更が発令されれば、その度にメンバーの異動やら業務の引き継ぎなどが発生し、余計な資料作成、事務作業や手続きが通常業務にプラスされる。これほどハタ迷惑な話はない。

担当している案件を異動先の部署に移管したり、その分の予算を新しく組み直したり、人事システムの所属員マスターファイルをメンテナンスしたり、とくにかく雑多な作業が膨大に発生するのだ。
しかも、半年に一度しか行わないようなシステム・オペレーションなどいちいち覚えているはずもなく、その都度マニュアルを読み直したりして作業するのだが、ケアレスミスの発生は止められず、それに合わせて手戻りも頻発する。

掲げられた大義名分はいつしか希薄になり、ほとんど年中行事のノリで組織変更が行われるのだ。

部署異動になったメンバーは、半年前にもらった名刺を使い切ることなく、また新しい名刺を発注することになる。
経費と紙資源の浪費もここまでくると、「ワザとやってんのか?」と真意を尋ねたくなってしまう。
日頃から「原価意識もって経費削減せよ!」とお題目のように唱えているのに、言っている上層部のやっていることは、原価意識の欠片もない、経費垂れ流しの愚行でしかないのだ。

全くもって意味と意義をこれっぽっちも感じられないのだ。
「何ための組織改編ですか?」と、どうして誰も上層部に進言しないのだろう?
会社組織という名の社畜集団に所属している限り、誰も勇気を持って異を唱えられないのだろう。

社畜はジャンヌ・ダルクには成り得ないのだ。

しばらくするとやってくるレイアウトとロッカー変更

組織変更が一段落し、ようやく平穏な通常業務の日々が帰ってきたかと思う間もなく、今度はそれに併せたレイアウト変更作業がオマケのようについてくる。
これも本当にハタ迷惑な話で、組織変更と同様に意味と意義を全く感じられない。
その度に引越し業者に依頼し、週末の時間を使ってフロアレイアウトの変更や荷物の移動を行うのだ。
経費がもったいない、経費が、経費が・・・・・。
原価意識をもってくれよ、本当に。

フリーアドレスという名の住所不定

世の動向を常にチェックし、良いと思われることは積極的に組織運営に導入するというありがた迷惑な大義名分のため、今回のレイアウト変更から「フリーアドレス化」が取り入れられた。

フリーアドレスとは読んで字の如く、オフィスにメンバーの固定席を設けずに、自由な席で作業を行える仕組みのことだ。様々なプロジェクトメンバーが毎日違う席で作業をし、コミニュケーションの活性化とシナジー効果を期待しているというのだが・・・・・。
その一番の目的は、ズバリ「経費削減」だろう。
座席を固定することにより発生するコスト(袖机や個別の事務用品の購入費用)を手っ取り早くカット出来るからだ。

だた、我が事業部は顧客先常駐メンバーが大半を締めているので、周りを見渡してみても空席がかなり目立つのだ。
こんな状態で毎朝好きな場所に座って作業したとしても、気がつくと隣は空席でコミニュケーションの取りようがなかったり、席が離れたことにより、同じプロジェクトメンバー同士のコミニュケーションが取りづらくなったりする現象が目立つようになったのだ。

コミニュケーションの活性化ってなんですか?

フリーアドレス化が実施されて日も浅いが、すでに席はほぼ固定化されてきている。
本来の目的はどこ吹く風、レイアウト変更前と席が似たり寄ったりになっているのが、この制度導入の失敗を雄弁に物語っているようだ。
どうやったって、気の合うメンバーは自然と集まるものなのだ。

一つ良かったことといえば、事業部内における、管理職の人望度がわかりやすく具現化されたことだろう。
とある部長の周辺席が常に空席になっている。
当該部長は関西出身で、とにかく声がデカくて細かいことに口うるさく、いつまでもいつまでもネチネチと嫌味をいい、ごもっともな正論を盾に部下を執拗に追いつめるという、誰が見ても分かりやすい、いわゆるパワハラ系の上司である。
コミニュケーション活性化は見事に結実し、今や彼の回りには誰も寄り付かない。
素晴らしい。
彼には口うるさく部下を叱責することで無駄な時間や労力を使わずにすむ、ベリー・サイレントな環境を手に入れることができたのだから、これが今回最大の収穫だったのではないだろうか?

気がつくと、私の席の周りも空席だらけになった。
どうやら私もベリー・サイレントな環境を手に入れることができたようだ。
パワハラはおろか、モラハラ、セクハラをした覚えは一切ないのだがどうしてだろう?

ひょっとしたらスメハラしてるのかも?
と、自分の着ているジャケットの臭いを必死に嗅いでる私がいた。

フリーアドレス化は「沈黙なる拒否」という名の住所不定だ。
スメハラ容疑者の私の周りには、今日も空席だけが目立っている。
おかしいな・・・・・昨夜は念入りに身体を洗ったはずなのに。


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